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ごあいさつ。


こんにちは。登山ガイド・スキーガイドのたむ屋マウンテンです。
どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ。
                                                   たむ屋マウンテン/田村茂樹



2015/06/21

御嶽山噴火を振り返る。

昨年の御嶽山の水蒸気爆発に頂上付近で遭遇した登山ガイドの小川さゆりさんの講演を聴いてきました。

私自身も当日は黒沢口の八合目の先で噴火に立ち会っています。自分ひとりで登るだけならまだしも、ガイドとしてお客様をご案内するとすると、考えなければならないことが山のようにあります。頂上付近でどのような状況になっていたかを生で聴く機会はこれまでなかなかありませんでしたし、今後、活火山に登る際、あるいはお客様をご案内する際にどうしていったら良いか、改めて考えたいと思い、行ってきました。

彼女の手記は以下サイトで公開されていますので、ご参考にしてください。
 http://www.s-shinsyu-guide.org/ontake_note_ogawa.html


追々、整理してもまとめようと思いますが、お話を聞いて感じたことを記します。

・山をよく知る、ということは非常に大切です。自分が登ろうとする山がどのようにして今のような環境になったのかを理解するのは自分の身を守るために欠かせません。地学、自然地理学を学びながら、御嶽山について大して勉強しないで登ってしまったのは大いに反省するところです。(ちなみに、彼女も10年ぶりとのことでしたが、私は初めての御嶽山でした。)

・「山を登る上では、日常生活よりも格段に危険な領域に足を踏み入れているという自覚、何があってもすべてを受け入れるという覚悟、自分の命は自分で守るという意識を持ち、自分が登ろうとする山をよく知った上で登ることが大切である。山との向き合い方がいざという時の明暗を分けると言ってよい。」 この言葉は山登りという活動の性質を非常に良く捉えていると思います。がしかし、一方でこれらの意識は、「良い経験は悪い判断から」という名言の通り、「山で苦い思いをしないと身につかない」ものです。私も、死なない程度の苦 い経験を積み重ねる度に登山者としても人間としても成長し、今に至っています。山登りにはそのような一面があることは頭の片隅において登っていただきたいと思います。

・このような山の厳しさは一方で、山の魅力と表裏一体のものとして存在しています。自然だけでなく、すべてのものには両面性があり、いいとこ取りはできない。このことを肝に 銘じて登る(生きる)必要があると思います。山が好きという方はぜひ、人間にとって都合の悪いところも含めて好き、と言ってほしいなと思います。

・活火山のガイドをできるか、するならどうするか、これはさらに難しい問題です。噴火の徴候かもしれないと少しでも考えられる現象が起こっている場合には依頼を断ったりツアーを中止することもあるでしょう。また、入山して噴火に遭遇したとしても入山したという判断自体に責を負うことはできないこと、いざという時には事前に説明する通りに自分で自分の命を守ってほしいということ、事態が切迫している時にはガイドも自分の命しか守れないということ、したがってお客様の命を守りきれないことも状況次第ではありうるということを説明して承諾していただけなければ、ご案内できないのではないかと思います。また、自分はヘルメット・ガスマスク・防護眼鏡を持って行くことを事前にお知らせし、お客様にもそのような備えを強く勧めます。


と、ごくごく一般的な登山者の方にはとても厳しいことばかり書いてきましたが、だからこそ山の世界には、先達やガイドなどその筋の人たちがいます。その人たちが同行するおかげで、レジャーとしてある程度手軽に山を楽しめる、しかし、それは100%の安全を保障するものではないし、それが山の魅力でもある。そういうことだと思います。


7月1日から少し入山規制が緩和され、黒沢口は八合目まで入れるようになりそうなので、当時を振り返りながら、ふたたび登ってきたいと思います。

 
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