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ごあいさつ。


こんにちは。登山ガイド・スキーガイドのたむ屋マウンテンです。
どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ。
                                                   たむ屋マウンテン/田村茂樹



2017/10/20

秋晴れの渓の中で。~黒部川下の廊下 後編~


翌朝は阿曽原温泉から黒部ダムまでの長丁場なので、朝弁当を食べて5時に出発です。
快調に歩いて、目論見通り人見寮に到着する頃に明るくなってきました。



ここから仙人谷ダムの坑内を通過します。
中に入ると温泉の匂いと熱気がもわっと漂ってきます。まさしく「高熱隧道」です。
右左右!
トロッコが来ないことを確認して上部軌道の線路を横断します。
坑内を通り抜けてダムに出ると、先ほど横断した線路の橋が見えます。
運がいいとちょうどトロッコが通過するのに出会うことができます。

上流側には雲切の滝。
しばらく歩いて、東谷出合の吊橋を渡って左岸に移ります。




旧日電歩道は左岸に移って少し登ってからほぼ水平に川を遡っていきますが、日本電力と黒部川の電源開発権を争っていた東信電力も別に調査のための道を当時造っています。その道は右岸の高いところから峡谷を望むようなライン取りで、たとえば冠松次郎氏の写真を見ると、今からは考えられないような視点から峡谷を覗き込むことができ、もしこの道が残っていたらこれもまた黒部の大自然を味わうのに絶好の道だったに違いありません。電源開発の調査のための道が伸びてその恩恵に与ることができ、しかもダムや発電所ができていなかった頃の生の黒部の大自然を味わえた世代は本当に羨ましい限りです。
吊橋からも見えていた黒部川第四発電所の送電線出口を背後に見送って、
黒部ダムまでしばし黒部の生の自然と真正面から向き合うひとときです。





スタンスが剥がれかかっている箇所もあります。念のためセルフビレイを取って通過します。
断崖絶壁に道が付けられているだけあって、途中で渡る沢はこんな険悪さです。
写真で見ると今にも崩れてきそう。。。
ちなみに下方向はこんな感じ。
本流の谷から振り返ってみると、、、
渓谷も美しいことこの上ないですが、岩壁の中腹に付けられた道がわかるでしょうか。


そして十字峡に到着です。


今では剱沢側の高い部分に吊橋が架かっていますし、たいていの場合はここでそこまでゆっくり
することもできませんが、やはり出合のところまで下りてみたくなるのは人情です。いつか必ず。。。



しばらく行くと、ここは去年滑落していた人を救助した現場です。

この下20mほどに滑落していました。
改めて見てみると、我ながら初めての現場でよく心を決めて下っていったなぁとしみじみ感じました。

このあたりでようやく谷の中にまで日が差して暖かくなってきました。

光が当たると渓谷の表情も刻々と変わっていきます。

今年はまだ仮開通だったので、天気の合間を縫って整備作業が続けられていました。お疲れさまです!
黒部川花崗岩。






















そして問題の黒部別山谷に来ました。


まず梯子を登ってスノーブリッジに乗ります。
行きは気温も低く雨だったので、表面はつるんつるんで転倒する人が多数いましたが、
この日は日も当たってきていたのでアイゼンなしで通過できました。
正式開通する時期であればここはいい休憩場所になりますが、とてもそんな悠長なことは言ってられない年です。


はしごから下りて、、、でもまだ戻れません。
泥だらけの足場の悪い岩場をクライムダウンしてようやくノーマルルートに復帰です。
前に整備してから少々時間が経って梯子が少し不安定になってきていたので、スノーブリッジの端を鋸で切って梯子を安定させてくれました。ありがたいことです。


ちなみにスノーブリッジの間際はこんな感じです。
例年ならばこの先に道が続いているのですが、まだ雪の中。。。
そして融けきる前にまた雪に覆われるのでしょう。
上流から見ると、スノーブリッジがきれいに谷を塞いでいる様子がよくわかります。



他のところでもこんな大きなブロックが谷に転がっていました。





道はそんなに登っていないにもかかわらず、川の河床と並んできました。
つまり、それだけ川の勾配が急だということです。



内蔵助沢出合を過ぎるとゴールはもうすぐ。
そしてダム下に到着。それにしても、この水量は寂しすぎます。
かの冠松次郎氏は、黒部ダムが建設される前に「黒部にさよならを言いに行ってきた」と
言っていますが、その気持ちがよくわかります。これと代償に下の廊下の風景を
今も見れていることを考えると来る度に複雑な心境になります。
おしまいにダムまでの登りです。

到着。

この下にはどんな景色が広がっていたんだろう。
何度来ても来る度に思わずにはいれません。


大自然と人間と、それぞれの歴史の交わりを感じながら、様々なことを考えさせてくれる道です。




 
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