Loading...

ごあいさつ。


こんにちは。登山ガイド・スキーガイドのたむ屋マウンテンです。
どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ。
                                                   たむ屋マウンテン/田村茂樹



2017/11/19

国道148号線旧道廃道三昧。



雨ということもあり、街道・旧道・廃道にも興味がある方がお客様だったので、国道148号線の旧道探索をしてきました(一部前日の写真も混ざっていますがご容赦ください)。場所など詳しく知りたい方は、地図を見ながらお読みください。
なお、これの記事をご覧になって興味を持っていただけるのはありがたいことですが、現在供用されていない区間への立入は法的にはグレーゾーンの行為ですので、色々な事情を理解した上で自己責任でお願いします。万が一、立ち入ったことで事故や遭難など不測の事態に陥った場合でも当方は責任を負いかねます。



この日は下里瀬からスタートして北へ。
千国街道の宿場のひとつで、国道の旧道もここを通っています。
大町宿以北は山間を進むこともあって、ほかの街道から比べると比較的小さな宿が多いですが、ここは比較的大きな方です。
千国街道を外れ、旧国道148号線は姫川沿いに下っていきます。明治になって物流が活発になって荷車や馬車を使った運搬の割合が増してくると、それまでは落石や雪崩で管理が大変なため避けられていた川沿いに道が切り開かれていくようになります。
上はトンネルを掘って旧道の上を橋で越えるように作られた新道です。
地上に出ているのはこれだけの短い区間ですが、冬の間の除雪の手間を考えて
屋根が付けられています。そしてそこからの落雪を避けるために、
旧道にも屋根が付けられています。



中土駅のある池原下集落を過ぎ、大糸線と併走して洞門を抜けると姫川橋です。
世界初の鉄筋コンクリート造りの橋のうちのひとつです。
場所は離れますが、千国駅近くにもこんなかわいい同じ型の橋があります。

姫川橋を渡ると小谷温泉口(中谷谷の入口)です。
新道はこの短い暴露部分にも覆いがかぶせられています。
雪に対する備えを考えるとだいぶ手間が減っていますが、
観光の面ではせっかくの姫川沿いの景観が眺められないという欠点もあります。

上の写真手前の橋を渡るとトンネルに入りますが、
実はその出口間際から右に旧道が伸びています。
雪崩や落石を防ぐためトンネルが延長されているので、気づきにくい作りになっています。
洞門を抜け、カーブを曲がると、、、
平倉トンネルの出口に接続しています。

その先は対岸に移って追跡します。

雨だったのでしっかりアングルを決めて撮っていないので見にくいかもしれませんが、対岸の崖の中段に道形が見えますでしょうか。
その先には落石に流されたネット。
こんな崖の道を安定的に維持するのはとても大変ですし通るのも怖いので、
姫川沿いの道路のうちでは早いうちにトンネル化されています。それが外沢トンネルです。
このあたりの姫川左岸からは浦川が流れ込んでいます。
上流には1911年に起きた稗田山大崩れがあります。
このおかげで少し下流にある来馬の集落は総移転を余儀なくされ、
田畑もすべて埋まってしまいました。来馬河原の写真はうっかり撮り忘れ。。。
来馬河原の先、道の駅を過ぎて左側には地熱井戸、さらにその左側に洞門があります。実はこれが旧道ですが、これだけ右側に広い土地があればわざわざ洞門を作って
崖際を通す必要はありません。そして、よくよく見ると、プレハブ小屋のところから
洞門が見えなくなっています。どうなっているのでしょうか。
中に入ってみるとこの通り。
白線もあり、紛れもなく、旧道の跡です。

なぜこんなことに!?
謎を解く鍵はこの写真。
1995年7月11日の梅雨の豪雨災害によって土台が洗われ、
なすすべもなく傾いてしまった洞門の姿なのでした。

災害復旧で大幅に埋め立て、堤防も作り、道の駅が作られて今に至るということなのです。
そんな歴史を偲びつつ、洞門の脇を通って先に向かい
島から旧道に入って姫川沿いを進みます。
ん?この白線はなんでしょう?
普通こんなふうに道を横切るように線が引かれることはありません。
その近くには不自然にコンクリートが盛られているところも。。。

この点についてはここに書くことはできませんので、
どうしても気になる方はこっそりと聞いてくださいね。よろしくお願いします。

塩坂トンネルの出口の湯原はこんな感じで旧道と新道が並んでいます。

この次の区間は、千国街道は同じ高さを通って新道の国界橋付近に出ますが、

旧道は葛葉峠を越えるために斜面を斜上して国界橋を越えます。
雨で寒かったので、新道でワープしてしまいました。
車内に流れ込む温泉の香りをかぎながら湯原トンネルを抜けると蒲原沢。
旧道の国界橋と新道の国界橋がかかっています。
姫川の左岸ではここが長野県と新潟県の県境です。
赤色の洞門と橋、そしてその下にかかる滝がいいなぁと毎度思う景色です。
が、1995年の豪雨災害からの復旧のために橋や砂防堰堤の工事をしていた方たちが
1996年12月6日に鉄砲水によって被災した現場でもあります。
当時は低気圧通過に伴って急に気温が上がって雨が降り、上流の雪を融かし、
それが染み込んで、大規模な斜面崩壊を起こしたのではないかといわれています。
旧国界橋から新道を眺めるとこんな感じ。
旧道の国界橋から上はこの通りの激流。沢というか、連瀑ですよね。
この上流部で砂防工事をするために付けられた道がうっすらと残っているように見えるので、
またいつか探検してみたいものです。
旧道の国界橋は重量制限があるため、ほぼ使える形で残っているにも関わらず
車両通行止めになっています。
最短距離で橋を架けて直角に曲がる感じ。
橋を架けることに対するコストが非常に高かった昔の橋の特徴ですね。
葛葉峠を越える道は新道の代替にもできるよう、復旧して供用されています。


さて、話は戻って左の平坦面が葛葉峠です。
ずっと渓谷を通ってきた姫川でこんな低い位置に平坦面があるのはおかしなことです。
実はこれ、右に山肌が見えている真那板山が崩れてきてできたものなのです。
土砂崩れにより葛葉峠と同じ高さに天然ダムができ、それが決壊した後、
川が浸蝕で掘り下げて今の流れになりました。
葛葉峠の正面に見えている斜面は姫川の流れが真正面から当たる上、
このような事情で地盤ももろいので、大規模な護岸工事がされています。
葛葉峠から対岸の真那板山を眺めると、大規模な崩壊の跡が見えます。
これがまるごと崩れたかと思うと恐ろしいことです。
峠には、新道開通により使われなくなったドライブインが何軒か佇んでいます。
下っていくと姫川温泉と平岩。ここから小滝まで、うねうねと渓谷沿いの洞門の道が続きます。往時はこれがずっと続いていたのだと思うと運転もさぞかし大変だったことでしょう。
平岩からつぎはぎの洞門街道をひたすら運転していきます。洞門は1961年になってようやく建設が始まり、完成後にようやく冬期も通れる道になりました。

ちなみに、平岩パーキング付近には改良前の昔の橋もあります
洞門群の中間あたりにある赤石平トンネル手前から外に出てみました。
左岸に渡ってきた大糸線に併走するように旧道があります。
大糸線の鉄橋の橋脚をよくよく見ると、おそらく増水時に運ばれてきた岩の破壊力のため、
ぼこぼこになっています。増水時は大岩がぶつかり合う音や、
その摩擦で甘い臭いような匂いが漂って、その場にいると怖くなります。
トンネルを出てしばらく行ったところに偶然こんなものを見つけたので、
洞門の上に登ってみました。
大糸線の洞門が少し見えました。
洞門を通り過ぎ、お客様は小滝から大糸線に揺られながら帰りの途につきました。


まだまだ語り尽くせないことはたくさんありますが、これで時間切れ。
冬に行くと旧道は雪と氷の世界になってまた一段と面白くなります。ぜひ!とはなかなか言えませんが、そんな景色を楽しみに行くのもまた一興です。

説明を追加
 
TOP