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ごあいさつ。


こんにちは。登山ガイド・スキーガイドのたむ屋マウンテンです。
どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ。
                                                   たむ屋マウンテン/田村茂樹



2015/11/30

異世界の森探検。~小笠原探訪記その2~

日は、アカガシラカラスバトという固有種を外来種から守るために作られた保護区の森のツアーに行ってきました。

 父島を始め小笠原群島は海底火山が成長して太平洋にできた海洋島なので、島に住んでいる生物は海流に流されて辿り着いたり、台風などで飛ばされてきたりして生き残った種に限られます。大陸など種数の多い地域であればすでにいる多くの種と競争したり自分の居場所を見つけて生き残っていく必要がありますが、海洋島では本来埋まっているニッチに誰もいないので、そういったニッチにまで適応して独特の種分化をしていっています(適応放散)。また、同じ種でも個体数が少ないため突然変異が広まりやすく、競争相手が少ないため淘汰もされにくいので、他の地域では見られない種に進化していくこともしばしばあります(固有種)。
  小笠原群島には獣がいないので、鳥たちは地上にも普通に下りてきます。このため、本土から持ち込まれてしまって野生化したヤギ、ネコ、ネズミなどにやられてしまうのです。そこで、生息地域のうちの核心部を丸ごと一周網で囲って、外から入れなくなるようにすると同時に中でも駆除を行う事業が進められています。こうした事業は世界自然遺産に登録されてからようやく大規模な予算や人手がついて本格的に進められるようになり、効果が出てきているとのことでした。

 さて、難しい話はこのあたりにして写真をお届けしていきます。


生態系を保全するため、この保護区域に入る時には登録を受けたガイドの案内でないとは入れません。


外来植物の種が持ち込まれるのと、ニューギニアヤリガタリクウズムシという肉食のプラナリア(固有種のカタツムリ類を食べてしまう)が侵入するのを防ぐため、念入りに靴底や持ち物を掃除して入ります
(次の写真に詳しい使い方)。

「タコノキ」という植物。支柱根が無数に伸びているのがたこの腕のようだからですね。
背の高い木だとこんな凄いことになります。












苔にも固有種が多いのだとか。

ネズミ捕獲用のわな。

もう数少ない種は食害から守るために網がかぶせてあります。

 こうした生態系を実際に観察すると、多様性の大切さがよくわかります。多様だから、ある程度の攪乱があっても生態系全体としてはそこまで致命的な影響は受けない。多様性が低いと、少しの攪乱で回復不可能な打撃を受けることがあります。
多くの方が指摘していることですが、これはたしかに人間界にも言えることだと思います。多様な背景・価値観・意見を持っている集団、すなわち自分たちと異なる要素に寛容な集団ほど持続性が高いということです。考えてみれば、戦後しばらくぐらいまでの安定した田舎の世界というのはそれぞれが海洋島のような存在で、それが今では時代の変化や外界からの攪乱に曝されて存続の危機に立たされている、という理解もできそうです。田舎に住み始めてまだ日は浅いですが、「外来種」として「固有種」の大先輩方を駆逐することなく駆除されることもなく、うまく共存していけたらなと思う日々です。


次回は海の中のお話です。ではまた。


 
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