台風明けで空き空きの穂先のアタックを昼過ぎ早々に済ませて飲んでいたら久しぶりに登りたくなってしまったので、酔いを覚まして、夕食後に西稜を曾孫と小槍のコルからひと登りしてきました。
数年前に先輩の山岳ガイドの方に連れて行ってもらって以来で、 アプローチを忘れて右往左往、この写真下部に見えるバンドに着くまでしばらく時間をかけてしまいました。 このルート、実はアプローチの方がいやらしいです。 |
小槍の基部に着くと壁がそそり立っています。 これをフリーで登る技術は僕にはないので小槍はパス。 コルにいったん登って、そこから稜を辿って登っていきます。 |
コルへの登りはこんな感じですが、写真で見えるよりはだいぶ寝ていて、十分フリーで登れます。 |
さて、いよいよ本格的に登っていきます。右側のカンテに沿って登っていきます。 左に落ちれば谷底へ真っ逆さま、右に落ちても谷底へ滑り台。 |
曾孫槍に着くとだいぶ景色が開けます。 |
前の記憶を辿りながら、ルートを探しつつ、一歩一歩孫槍のフェイスを登っていきます。 |
山荘が真下に見え、ギャラリーの視線を浴びながら気持ちよく(内心少しどきどきしながら) 登っていきます。 |
直下の立ち気味の壁を乗り切って回り込むと孫槍頂上。 ここからのクライムダウンは難しくはないですが高度感があります。 慎重に、慎重に。 |
最後は大槍に向かってこのフェイスを登りきれば穂先です。 見た目はのっぺらぼうですが、実際に立ってみるとホールドもスタンスも十分、傾斜もきつくありません。 |
そして着きました! 本日二度目のの山頂です。 |
常念岳に影槍が伸びていました。 |
槍の上で初めての記念撮影(笑) |
今までは大人数のガイドでしか来ていなかったのでなかなか落ち着いて槍ヶ岳と向き合う余裕がありませんでしたが、槍沢を登っていくと迫り来るあの存在感。
やっぱり登りたくなって登ったのは槍ヶ岳の神様のお導きでしょうか。ロープで確保されていたときと違って、まだまだこのレベルの壁をひとりで登るには微かな緊張を感じます。それを克服するには自分を信じ、自分の力を最大限に発揮する必要があって、山の先輩の言葉を借りればハートの強さ、先達の言葉を借りれば魂の強さといったところでしょうか。単なる度胸とも肝っ玉の強さとも違うニュアンスがそこにはあるように思います。
そして山頂にたったふたり。刻々と変わる光に目を奪われ、日暮れまで短いような長いような、時間を忘れるひとときでした。祝詞と般若心経を上げ、まさに「諸々の罪穢れ払い禊ぎて清々し」。やはりこの山には神様がいらっしゃる、そう思えた日でした。
ちょうど一通り歩いてみたところで、来年は播隆上人の足跡を辿る槍ヶ岳登山をやってみたいと思います。 きっといろいろと感じるに違いありません。