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ごあいさつ。


こんにちは。登山ガイド・スキーガイドのたむ屋マウンテンです。
どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ。
                                                   たむ屋マウンテン/田村茂樹



2017/12/17

山の厳しさと美しさ、ガイドの使命を改めて感じた日。~木曽駒ヶ岳~

気温-20度、風速10m/s、雪小降り。冬山らしい厳しい環境の中、千畳敷から木曽駒ヶ岳本岳まで往復してきました。


夜の間に吹雪が来ていたので、朝ごはん前にピットチェック。
新雪は5cm程度、今週前半?の柔らかい雪が60cmほど、その下に硬いスラブが20cmほど。

天気予報やレーダーを見ていると粘って出た方が天気が良さそうだったので、のんびり準備しつつ他のパーティの見物(笑)

だから、ロープを跨いで行ってそんなところにトレースつけんな!!(怒)
手袋飛んでくよ~。

そんなこんなで、今度は我々の出発です。



カールの地形が頭に入っていないとどっちに向かえばよいかわからない感じでした。
八丁坂を登っていると、目論見通り少し見通しがよくなってきました。
乗越浄土でで一休みして、中岳経由で本岳を目指します。
意外と風が穏やかだなーと思いましたが、小屋の西側に出たらやはりビュービューでした。
風速10m/s、気温-20度といったところでしょう。
中岳を越えて、本岳の山頂に向かって最後の登り。
冷たい風がそこそこ強く吹いていて長くはいられませんでしたが、雲に浮かぶ山々を見れました。
そして無事登頂!!
帰りも慎重に。。。

乗越浄土からは改めて慎重に。。。

いろいろありましたが、今回も無事に帰ってきました。
駒ヶ岳神社に無事帰還のお礼参り。
やはり昼過ぎにはいい天気になってきました。
ちょっとタイミングが悪かった感もありますが、
数日前の予報では登れるかどうかさえ危うい感じでしたから、登れただけよしとしましょう。
冬山の厳しさも体感していただけたことですし。
さよ~なら~。また来るよ~。



 さて、ここからが本題。なかなか経験しないことですので、こんなこともある、ということを共有できればと思って書いてみようと思います。なお、登場人物が出てきますがそれぞれの方がどうこうというのではなく、他意はありませんのでご理解願います。

  無事に本岳に登頂して中岳に登り返していると、中腹で何やら救助のようなことをしている人たちがいました。訓練にしては道のどまんなかでやっているし、、、と思い声をかけてみると、なんと心肺蘇生中。同行のKガイドと相談し、今日の雪の状態なら千畳敷への下りで多少転けたとしても止まるので、何事もなければガイド9人を連れて帰るのは不可能ではないと判断し、Kガイドはそのパーティの救助に参加し、田村は9名様を案内して千畳敷に向かいました。そうしたら、すぐにお客様のひとり(その方は朝起きると高度障害の症状が出ており食欲もなく、それが続くようであれば登るのは諦めると言っていましたが、出発までに調子が回復してきたので軽く食べてKガイドが案内していました。)が転倒。しんどいのでペースをゆっくりにとはいうものの、これだけ厳しい環境の中で今にも止まりそうなペースで歩くのは他のお客様が大変になってしまうので、とにかく中岳山頂の岩陰までは気合で歩くように指示してなんとか登ってもらいました。着いたところで荷物を下ろし、食べ物飲み物を上げて様子を見ましたが、どうも自力で歩き続けられるかどうかという状況だったので、これでは自分ひとりで下ろすのは難しいと判断、お客様には身体が冷えないように対処しながら食べ物や飲み物を取って待機するように指示しKガイドを走って呼びに行き、要救助者のいたパーティには申し訳ないですが戻ってもらいました(自分ひとりで案内するのが少数なら、そのお客様を背負って残りの方の面倒を見ながら降りれそうという計算もありました)。3分ほどで自分のパーティに戻ると、幸いなことにそのお客様は回復してきたようで、何とか歩いて下れそうになってきたので、荷物を肩代わりして、また元の2つのグループに分かれてガイド2人で下山することにし、その後は無事に千畳敷まで下山することができました。
 

 要救助者のいたパーティの話に戻ります。残してきたのは気がかりですが、これだけ厳しい環境では自分(たち)の命を守ることの方が先決ですので、人助けをできるのは余裕がある人(たち)のみです。10分くらいしか力になれませんでしたがそれで引き上げてしまったのもやむをえないことで、どうしようもありません。気になるのは、突発的な急病なら話は別ですがそうでないなら前兆はなかったのか、また、前兆に気づいて対処することはできなかったのか(そんな話をしている場合ではなかったので聞けていません)、要救助者が息を吹き返すのはほぼ絶望的だったし大柄で引きずるのも困難だったので、どこで残りのメンバーが諦めて下山を決断したか、という点です。
  
悲しいことですが、今回は初めて、山で人が死に瀕する姿を目撃しました。そういう世界にいること、そして、山の素晴らしさや感動はすべてはこうした厳しさと表裏の関係であることもを改めて感じました。そして、お客様の命を預かり、守り抜くことの重みも改めて実感しました。そういうときは本当に大変ですが、だからこそガイドという仕事はやりがいもあり、面白くて飽きない仕事です。これもまた表裏の関係ですね。いろんなことを教えてくれるおやまに、みなさまに、ガイドというお仕事に今日も感謝の一日でした。17日夜現在で速報は出ていないのでどうなったかわからないのですが、要救助者の方の願わくば無事帰還、おそらくはご冥福をお祈り申し上げます。


追記
12/18付信濃毎日新聞によると、要救助者は17:50に死亡が確認されたそうです。死因は虚血性心疾患、2人パーティのうちのひとりで、本岳登頂後の帰りだったそうです。ご冥福をお祈りします。

 
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